サッカーの話をしよう

No.1168 迫るワールドカップ・ロシア大会

 ロシアで開催されるワールドカップの開幕(6月14日)まで1カ月を切った。1930年にウルグアイで第1回大会が開催されたワールドカップ。第二次世界大戦による12年間の空白をはさみ、88年目、第21回大会となる。
 日本では、先月、日本代表のハリルホジッチ前監督が解任されて西野朗監督が就任したところで時計が止まっており、どんなサッカーをするのかだけでなく、どんなメンバーになるかさえまったく見えない混乱状況にある。しかし世界は確実に開幕へのカウントダウンにはいりつつある。
 2006年ドイツ大会以来、12年ぶりに欧州の地で開催されるワールドカップ。欧州開催は過去に10回あるが、東欧での開催は初めてのことだ。しかも今回の開催都市には、ロシアでも「アジア地域」に属するエカテリンブルクが含まれている。たしかにロシアのサッカー協会は欧州サッカー連盟所属だが、この大会を単純に「欧州の大会」と言い切ることはできない。
 サッカーは世界の「大衆」のスポーツであり、ワールドカップは大衆と大衆が直接的に交流する希有な機会ということができる。ロシアには国外から数十万人のファンが押し寄せるだろうが、異文化との交流で新たな世界を知る人も多いはずだ。
 私も、短期滞在はあるが、ロシアに1カ月間も滞在し、しかもモスクワ以外の地方都市を訪れるのは初めての経験だ。それぞれ独自の歴史をもつさまざまな民族が入り乱れる国でどんな人びとと会えるのか、楽しみでならない。
 「ロシア人」というと、私には、素朴で親切な心をもった人びとというイメージがある。それは「国家」としてのロシアのイメージとはかなり違う。世界中から訪れるファンは、そうした「ロシアの人びと」との交流を通じて、心からワールドカップを楽しめるのではないか。もしかすると、この大会は、政治的打算と駆け引きに満ちた「非核化交渉」よりはるかに世界平和に貢献するかもしれない。
 1966年イングランド大会でワールドカップと出合い、1970年メキシコ大会を東京12チャンネル(今日のテレビ東京)の「ダイヤモンドサッカー」で見ながら「一生にいちどは行ってみたい」とあこがれた。それが、1974年西ドイツ大会で早くも実現し、以来、今大会で現地取材が11大会目。スタジアムで直接見た試合も、今回の開幕戦「ロシア×サウジアラビア」(モスクワ)でちょうど200試合となる。
 西野監督率いる日本代表の戦いを報道の立場でサポートしつつ、今回も決勝戦までワールドカップを楽しみたい。開幕まであと1カ月。準備を急がなければならない。

(2018年5月16日) 
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