サッカーの話をしよう

No.1105 早生まれは不利か

 奥寺康彦(64)は、私と同学年のヒーローである。
 神奈川県の相模工大(現湘南工科大)付属高を卒業後、日本リーグの古河電工と日本代表で活躍、1977年にドイツの名門1FCケルンに移籍してブンデスリーガで9シーズンプレーした。
 だが現代の日本で生まれていたら、彼はプロ選手にはなれなかったかもしれない。1952年3月12日生まれ。「早生まれ」の彼は、中学時代まで小柄でフィジカルには恵まれていなかった。中学入学時にJリーグクラブの試験を受けても合格にならなかった可能性は十分にある。身長が急激に伸びて「怪物級」のプレーヤーに成長するのは、高校進学後のことだった。
 昨年5月に開催された欧州サッカー連盟(UEFA)の16歳以下の大会で出場選手全288人を調査したところ、1~3月生まれの選手が全体の半数近くを占めていたという。逆に10~12月生まれは24人、わずか8.33%だった。
 世界の「年齢別大会」は大会が行われる年の元日以降にその年齢になる選手という区切りである。大会が5月に行われると、年の早めに生まれた選手の有利は否めない。
 こうしたことが積み重なると、年の後半生まれの選手のハンディは大きい。常に自分よりフィジカルの強い相手と対戦することによって自信を失い、指導者から見放されることにつながるからだ。
 「このため私たちはタレントの25%を失っている」と、ベルギー・サッカー協会の育成年代代表を統括するボブ・ブロワイエスは分析する。
 日本ではどうか。国内のサッカーは学校年度に合わせて4月1日で区切られる年齢区分。当然、1~3月の「早生まれ」はハンディを負う。
 しかし代表クラスでは少し様子が違う。昨年のU-16アジア選手権に出場した日本代表25選手では早生まれがわずか3人だったが、過去5回のU-16アジア選手権出場117選手を調べると早生まれは27人。4~6月生まれ(36人)、7~9月(31人)、10~12月(23人)と大きな差があるわけではない。早生まれには1学年上の選手も含まれ、国際大会の年齢区分が日本の年齢区分によるひずみを修正する面ももっているようだ。2014年ワールドカップの日本代表23人では、早生まれが10人もいた。
 欧州では自然年齢ではなく「生物年齢(成長度。具体的には成人時の予想身長に対する現在の身長の割合)」別のトレーニングや大会の試行が始まっているという。肉体面でも精神面でも成長する時期のトレーニングが一生を決めると言っても過言ではないサッカー。タレントを失わないよう、個別の「成長期」を考慮した指導が必要だ。

(2017年1月25日) 
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