サッカーの話をしよう

No.1088 いよいよデビュー、追加副審

 10月5日に東京と大阪で行われるJリーグ・ルヴァンカップ(旧ナビスコ杯)準決勝第1戦が楽しみでならない。日本のサッカーに、いよいよ追加副審が登場するからだ。
 サッカーの審判は1891年に主審1人と副審(当時は線審)2人の「3人制」になり、百年後の1991年に主審や副審の仕事を助ける「第4の審判員」を置くことができるようになったものの、基本的には125年後の今日まで同じ形が続けられている。
 だがより正確な判定を求める時代の要請には勝てない。2012年、ゴールを判定する「ゴールラインテクノロジー」とともに、両ゴールの近くに位置する追加副審の導入が認められたのだ。ただ前者は設備導入と運営に巨額の資金を必要とし、後者は人的な手当てが大変なため、日本国内では導入されなかった。
 昨季の開幕直後に重大な誤審が重なったことでJリーグの村井満チェアマンが追加副審導入の検討を要請。ことしのルヴァンカップ準決勝以降の5試合と、チャンピオンシップ(最多5試合)で正式に導入されることが決まった。
 以来、Jリーグに審判員を派遣する日本サッカー協会は入念な準備をしてきた。このシステムのスペシャリストであるシャムスル・マイディン氏(シンガポール)を招聘(しょうへい)して研修会を開き、5月下旬からJリーグ3部(J3)の試合を使って試験を行ってきた。先週まで毎節1試合、計13試合で実施してきた試験は、今週末、9月25日の富山×大分で終了する。そしていよいよ10月5日、「デビューの日」を迎えるのだ。
 試験に参加したのは、各試合で主審1人、副審2人、追加副審2人の計5人、13試合で延べ65人になる。Jリーグのタイトル争いで使うための試験だから、当然、全員J1を担当する審判員だ。ちなみに、追加副審は「主審」として活動している人が務めることになっている。
 追加副審のシステムでは、主審、副審、追加副審の3人でひとつのゴール前のプレーを3方向から見る。角度や見るべき事象など役割を明確に分担し、タイミングよくコミュニケーションを取り合うことが重要なポイントだ。5月の研修会では、これまでとはかなり違う役割にとまどう審判員も少なくなかった。
 だが5カ月間にわたった準備で役割分担もスムーズになってきたに違いない。試験導入の後半には、同じ役割で2回目、3回目を担当する審判員も見られ、「候補者」も絞られてきたようだ。
 対戦する両チームだけでなく審判チームもコミュニケーションとチームワークが命。ルヴァンカップ準決勝では、ゴールの右横に立つ新しい審判員にも注目してほしい。

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AR研修会

(2016年9月21日) 
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