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サッカーの話をしよう
No.869 対角線審判法
ワールドカップでも活躍した西村雄一主審が、Jリーグの試合前に奇妙なウォーミングアップをしているのを見たことがある。
試合前、審判員もピッチに出てアップするが、通常はハーフライン上を往復して走りながら準備する。しかし副審とともにしばらく体を温めた後、西村氏はひとりだけでチームがアップする地域にはいっていったのだ。
センターサークルあたりから斜めに左側のハーフの左コーナー付近まで行くと、中央に戻って今度は右側のハーフの左コーナー近くまで。ときにバックステップを入れ、また振り向きながら動く。試合で自分が使う「対角線」の上から、太陽の方向、スタンドの見え方などを確認していることがわかった。
「対角線式審判法」は、主審と副審が協力して試合を見るために考え出された方法だ。主審はふたつの左コーナーを結ぶ対角線上を基本に動き、副審はハーフラインから右コーナーの間を往復する。これによって、ひとつのプレーを主審と副審ではさみ込むように見ることができる。
サッカーの試合を3人の審判員で判定するようになったのは1891年のことだが、当初は副審はボールが外に出た場所を正確に示すために100メートルを超すタッチラインをフルに往復しなければならず、主審はただボールを追って動いていた。やがて2人の副審の動く範囲はハーフラインまでとなり、主審の動きも整理されていく。
それを1930年代に「対角線式審判法」として整理し、確立したのが、スタンリー・ラウス(1895―1986)だった。審判引退後にイングランド協会の専務理事、国際サッカー連盟=FIFAの会長(62―74)を歴任した人だ。
対角線式審判法は30年代の終わりにはイングランドで主流となり、10年ほどで世界中に広まり、定着した。
といっても、主審は杓子定規に直線上を走るわけではない。プレーを常に片方の副審と両側からはさみ込めるよう、外側にふくらみながら動く。平たいS字型を描く動きだ。
対角線を変えることもある。副審が走る場所の芝生保護のためだ。かつてイングランドでは、クラブの要請で前後半で対角線を変えていたという。
対角線式審判法は、主審と副審の計4つの目で、しかも別方向からプレーを見て、より正確な判定を下すためのシステム。その合理性は、70年の歳月を生き抜いたという事実が十分証明している。
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(2012年2月1日)
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