サッカーの話をしよう

No.851 五輪予選日程、AFCの愚行

 来年夏のロンドン五輪出場権獲得を目指すアジア最終予選がスタートする。C組にはいった日本のライバルはバーレーン、シリア、マレーシア。4チーム中首位の1チームだけに出場権が与えられる。2位になると過酷なプレーオフだ。
 U-22日本代表(関塚隆監督)は、今夜鳥栖で行われるマレーシア戦で予選をスタートする。第2戦は11月22日のバーレーン戦(アウェー)、第3戦は同27日のシリア戦(ホーム)、第4戦は来年2月5日のシリア戦(アウェー)、第5戦は同22日のマレーシア戦(アウェー)そして最終戦は3月14日のバーレーン戦(ホーム)。
 この日程には大きな問題がある。すべての試合が、国際サッカー連盟(FIFA)が定めた「国際試合日カレンダー」を外して設定されているのだ。
 国内リーグと代表チームの活動日を明確に分け、バッティングしないように定めたのが「国際試合日カレンダー」。世界中で代表チームの活動日を合わせることにより、クラブとのトラブルをなくす意図で制定された。
 この「カレンダー」は「A代表」のみを対象としたもの。五輪代表は対象外で、「カレンダー」で指定された日の試合でも、強制的に選手を招集する権利はない。しかしU-22代表といえば、どこの国でもクラブの主力クラスのはず。前回の北京五輪の最終予選は例外なく「カレンダー」に合わせて行われた。
 日本のU-22代表選手も、当然、その大半がJリーグのクラブで主力として活躍している。今回の予選日程を見て、Jリーグは五輪予選に協力することを申し合わせた。すなわち、五輪代表の活動期間中は、クラブは使えないことになる。
 先週末のJリーグでは、各クラブはU-22代表選手を使うことができなかった。11月にも、重要なリーグ終盤の2節で主力選手を欠くことになる。
 今回の五輪予選がすべて「カレンダー」から外されたのは、主管するアジアサッカー連盟(AFC)が、A代表の試合日と分けることで、より五輪予選に注目を集める形にしようとした結果だった。いや、より正確に言えば、「テレビ放映権収入をより多く」という意図だった。
 利益追求の姿勢が、選手自身とその所属クラブが大きな犠牲を強いられる、本末転倒の状況につながった。これがサッカーを統括する団体がすることだろうか。このような愚行は、絶対に今回限りにしなければならない。
 
(2011年9月21日)
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

サッカーの話をしようについて

1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。

アーカイブ

1993年の記事

→4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

1994年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

1995年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

1996年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

1997年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

1998年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

1999年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2000年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2001年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2002年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2003年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2004年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →9月 →10月 →11月 →12月

2005年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2006年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2007年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2008年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2009年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2010年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2011年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2012年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2013年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2014年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2015年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2016年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2017年の記事

→1月 →2月 →3月 →4月 →5月 →6月 →7月 →8月 →9月 →10月 →11月 →12月

2018年の記事

→1月 →2月 →3月