サッカーの話をしよう

No.810 ストライカーを育てるC大阪

 U-16(16歳以下)日本代表が来年のU-17ワールドカップ3大会連続出場を決めた。
 出場を確定したアジアU-16選手権準々決勝のイラク戦で目を引いたのが、2得点を決めて勝利に導いたFW南野拓実の才能だった。セレッソ大阪U-18所属、まだ15歳の高校1年生。抜群のスピードと反射神経で堅固な守備を打ち破った。
 そういえばことしのU-19日本代表のFWも4人のうち2人はC大阪所属だった。スピードと強さの永井龍、187センチの長身でポストプレーを得意とする杉本健勇だ。近年の日本のユース年代のエースは、柿谷曜一朗(現在J2の徳島所属)、森島康仁(同J2の大分所属)と、C大阪の選手が続いている。
 ストライカーの育成は日本サッカーの最大のテーマだ。それがこれだけ1クラブに集中するのは、何か秘密があるのだろうか。
 「関西の少年サッカーには型にはまらない指導をしている人が多い。それが独特のリズムをもった選手を生むのかもしれない」
 C大阪アカデミーダイレクター兼U-18監督の大熊裕司さんはそう話す。中学1年でC大阪に加入するときには個性と高い技術をもっているというのだ。
 南野は大阪府内のゼッセル熊取というジュニアチームで育ち、兄を追ってC大阪のU-15に加わった。すでにゴール感覚やDFをすり抜ける感覚をもっていた。それを消さず、逆に磨き上げながら、細心の注意を払い、タイミングを見てプロで活躍するために必要なメンタル、フィジカルや守備力の強化に取り組んできたという。
 「ストライカーというのはもって生まれた素質や感覚の要素が大きい。『育てる』などとはおこがましい。ただ、その素材に指導者が甘えてはいけないと戒めている」
 C大阪が一貫して攻撃的なサッカーを志向し、日本人ストライカーで戦おうとしてきたことも、連続して好ストライカーが輩出された要因かもしれないと大熊さんは語る。釜本邦茂を押し立ててチャンピオンになった70年代の「ヤンマー」のころからの伝統だろう。
 00年からC大阪の育成部門にたずさわり、現在はスクールを担当する風巻和生さんは、「選手を育てるのは人間を育てること。ご両親、学校、担当コーチ、寮で面倒を見る人びと...。多くの大人が、目先の成果にとらわれずに関わっていくのが大事」と話す。
 ストライカーはどう育つのか、C大阪の取り組みが与える示唆は小さくない。
 
(2010年11月10日)
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

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1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。

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