サッカーの話をしよう

No.479 女子ワールドカップ開幕

 第4回女子ワールドカップが始まる。
 1991年から4年ごとに開かれている大会。今回は、前回に続いてアメリカで開催され、9月20日に開幕、10月12日にカリフォルニア州カーソン(ロサンゼルス近郊)での決勝戦まで、全米6都市のスタジアムで、32試合が行われる。
 本来なら、今大会は中国での開催のはずだった。91年に第1回大会を開催した中国は、現在、国際サッカー連盟(FIFA)発表の女子ランキングで4位。前回は、アメリカと決勝戦を争い、120分間の死闘を0−0で終えた後、PK戦4−5という僅差で初優勝を逃した。
 「地元で借りを返す」と張り切っていたが、この春アジアを襲った新型肺炎が中国各地で流行し、開催を断念した。FIFAは代替開催国を探し、オーストラリアとアメリカが立候補、短期間で準備を整えられる組織力を買ってアメリカでの連続開催となった。

 アメリカは世界に冠たる「女子サッカー王国」だ。というより、世界で最も「ノーマルなサッカー国」といっていいだろう。2001年のFIFA調査によれば、競技人口は約1800万人。そのうち700万人が女性だ。ユース年代でも、男子が220万人、女子が145万人と、比率はまったく同じだ。アメリカほど、男女平等にサッカーを楽しんでいる国はない。
 1996年にスタートした男子プロサッカーリーグMLSに続き、2001年には世界で唯一の本格的な女子プロサッカーリーグWUSAが始まった。残念ながら、わずか3シーズンの活動後、来季からのスポンサー獲得が難しいとの見通しで、WUSAは今週月曜日に休止宣言を出した。しかし豊富な女子サッカー人口が消えたわけではない。再興のチャンスは十分にある。

 さてFIFAランキングで14位につける日本は、プレーオフでメキシコを下して4大会連続出場を決めた。上田栄治監督は、Jリーグのベルマーレ平塚(現在の湘南ベルマーレ)やマカオ代表チームを率いた経験のある人だ。
 欧米の強豪に比べると、日本選手は体が小さく、フィジカル面でのハンディが大きい。かつては高い技術で乗り越えようとしていたが、上田監督は、それにプラスしてチームとしてのスピードを重視し、果敢に若手を起用して強化を進めてきた。
 20日(日本時間21日)にオハイオ州コロンバスでアルゼンチンと対戦、24日(同25日)には同じ会場でドイツと、そして27日(同28日)にはマサチューセッツ州フォックスボロ(ボストン近郊)でカナダと対戦する。
 「初戦のアルゼンチン戦で勝ち、最後のカナダ戦に決勝トーナメント進出をかける勝負をしたい」と上田監督。

 アルゼンチンは初出場だが、南米予選ではブラジルと2−3の接戦を演じた。プレーメーカーのロサーナ・ゴメスは、マラドーナばりのテクニシャンとの評判だ。FIFAランキングは35位だが、あなどることはできない。
 第2戦で当たるドイツは、FIFAランキング3位の強豪。破壊的な得点力を誇る大型ストライカーのブリジット・プリンツを抑えるのは、なかなか大変だ。
 そしてカナダは、王者アメリカとの切磋琢磨で近年急速に力をつけた。かつて日本のLリーグでプレーしたFWシャーメイン・フーパーに加え、FWクリスティン・シンクレアが大きく成長し、攻撃力が格段に上がった。
 日本は、WUSAのアトランタ・ビートで3年間プレーしてきたエースの澤穂稀以外は、全員、国内のチームに所属するアマチュア。チーム一丸となった戦いで95年スウェーデン大会以来の「ベスト8」を目指してほしい。
 
(2003年9月17日)
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