サッカーの話をしよう

No.473 それでもU-22に行かせるべきだった

 私は間違いをした。先週の記事で、Jリーグ・オールスター(8月9日、札幌)に出場する選手がU−22(22歳以下)日本代表のエジプト遠征に参加しないのは、Jリーグの責任だと書いた。それは間違いだった。日本サッカー協会の田嶋幸三技術委員長に話を聞いた。
 エジプト遠征が決まったのは4月のことだった。その時点では、オリンピックのアジア最終予選スタートは8月末の予定だった。協会とJリーグは、「遠征はオールスターと重なるが、オリンピック出場は大事だから、U−22の強化を最優先させる」という考えで一致していたという。
 しかし新型肺炎(SARS)の影響で他組の予選日程が大きく狂い、4月27日、アジアサッカー連盟は最終予選のスタートを2004年3月まで遅らせることを決めた。

 ミャンマーを下して5月3日に最終予選進出を決めた後、日本協会とJリーグは日程を白紙に戻して考え直した。そしてその際に、最終予選までの時間を考え、エジプト遠征よりオールスターを優先させることにした。Jリーグがわがままを通したのではない。日本のサッカーのためにどうしたらいいか、いっしょに考えての結論だったという。
 というわけで、オールスター選出選手の遠征不参加をJリーグの横暴と決めつけた先週の私の記事は、完全に間違いだったことになる。不当な「言いがかり」をしてしまったJリーグには、素直に謝罪したい。
 SARSを抜きにしても、アジアのサッカーはいまだに確たる日程がなく、混乱している。国内のリーグ戦をしっかりやろうとすれば、どうしても代表の活動とぶつかる。そうしたなかで、協会とJリーグが、対立するのではなく、「日本のサッカーのために」という視点で協力し合っているのは、喜ばしい限りだ。

 ただしそれは、結論に至る「プロセス」に関することだけだ。「結論」は、やはりおかしいと言わざるをえない。
 8月4日にオールスター出場選手が発表され、DF根本(仙台)、MF阿部(市原)、大久保(C大阪)、松井(京都)、そしてFW田中(浦和)の5人のU−22代表が選出された。その前日に、山本昌邦監督率いるU−22代表チームは、5人を日本に置いたままエジプトに出発している。
 5人のうち4人は、最近の試合で完全なレギュラーとしてプレーしており、FW田中も、攻撃に変化をつける貴重な交代選手として必ずといっていいほど起用されている。
 今回のような厳しい条件下で、強豪とアウェーで戦う経験が、最終予選までにあとどれだけあるだろうか。中心選手に今回の遠征を経験させられなかったのは、強化の面で大きなマイナスと言わなければならない。

 7月23日に東京で行われた韓国U−22代表との試合で、日本は相手の力強さに圧倒され、自分たちのプレーができなかった。将来有望な選手が少なくない日本のU−22代表だが、この試合内容から、オリンピック出場が決して楽観できるものでないと感じた人も少なくないだろう。
 5月の時点では、オールスターに5人も選ばれるなど、誰も予想しなかったはずだ。しかし7月の韓国戦のころには、かなり多くの選手が選出されそうだとわかっていた。その時点でもういちど日本協会とJリーグが話し合いをもち、何らかの対策をとることは不可能だったのだろうか。
 3月のアメリカ遠征中止とウルグアイ戦の東京開催、5月の東アジア選手権延期と韓国戦の実現など、ことしにはいってからの日本サッカー協会の「機動力」には目を見張るものがある。このU−22代表の遠征だけ、何の緊急対策もたてられなかったのは、なぜなのだろうか。
 
(2003年8月6日)
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