サッカーの話をしよう

No.403 選手を故障から守れ

 日本代表の守備の中核であり、チームのリーダーのひとりである森岡隆三(清水エスパルス)の故障はショックだった。3月7日の練習中に右足太もも裏の筋肉に肉離れを起こし、全治6週間と診断されたという。
 2月1日に、森岡はやはりエスパルスでの練習中に同じ個所を痛め、全治4週間と診断されていた。Jリーグの開幕戦は欠場したが、「そろそろ復帰」と思われていた直後の再発だった。
 激しい身体接触を伴うサッカーでは、捻挫や打撲などの負傷は避け難い宿命ともいえる。だが肉離れなど筋肉の損傷は、マッサージや入念なストレッチなどである程度予防が可能なだけに、「なぜこの時期に」と思わざるをえない。

 ワールドカップに向けての日本代表の準備は、非常にゆっくりしている。1月に5日間の合宿、2月にメディカルチェックと3日間の合宿(紅白戦を含む)、そして3月にも2日間の合宿。練習に使ったのは計2週間にも満たない状況」で、3月21日のウクライナ戦(大阪)を皮切りとする実戦での準備にはいる。
 こうした日程になった背景には、「チームづくり」が昨年までにほぼ完了しているというトルシエ監督の自信がある。
 数年間いっしょにプレーしてきたチームは、戦術の徹底、選手同士の相互理解など、すでに高いレベルにあり、ワールドカップに向けて必要なのは、心身両面でのコンディショニングだけという状態になっている。だからシーズン立ち上げの時期に代表チームで長期間拘束するより、所属クラブでしっかりとフィジカル面の準備をしてもらおうというのが、今回のプログラムだった。

 しかしそれでも、森岡を筆頭に、数多くの負傷者、故障者が出てしまった。負傷、故障の直接的な原因は個々に違うだろうが、その背景には、ワールドカップが何らかの影響を与えているはずだ。
 日本にとって、ワールドカップ出場は98年に続いて2回目となる。しかし「地元開催」のワールドカップは、もちろん初の経験だ。どんなプレッシャーが選手たちにかかっているのか、そしてこれからかかっていくのか、誰にもわからない。
 森岡は昨年、Jリーグ、日本代表、アジア・カップウィナーズカップと、休みなく試合に出場した。そして天皇杯でも2年連続決勝に出場し、ことしの元日にようやくシーズン最後の試合を終えた。日本代表の最初の合宿が始まったのは1月21日。「オフ」は3週間に満たなかった。
 もちろん、その合宿に合わせて、しっかりコンディションを整えていかなければならない。体を休める時間はどのくらいあったかのだろうか。

 そうした状態で、代表合宿からクラブの合宿に戻った2月1日に最初の故障を起こす。そして完治していたはずの1カ月後に、同じ個所をさらに悪化させる肉離れだ。
 日本サッカー協会は、この森岡の故障を徹底的に調査検討する必要があるのではないか。「犯人探し」をしろというわけではない。森岡個人やエスパルスのメディカル態勢を非難する目的でもない。
 選手をこうした故障から守るには、国内試合の日程、代表活動の日程と内容、完全休息期間の設定と、その過ごし方など、あらゆる方面からのアプローチが必要だ。検討結果によっては、天皇杯の大会日程を変えなければならないことになるかもしれない。日本のシーズン制の変更が提案されるかもしれない。
 森岡の故障は大きなショックだったが、ワールドカップに間に合わないということではないようだ。徹底的な調査と検討で、選手を保護するノウハウを蓄積し、「第2の森岡」を出さないようにしなければならない。
 
(2002年3月13日)
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