サッカーの話をしよう

No.274 AFC抗議の退席に和解の道を

 決勝戦の会場は横浜。浦和では準決勝を...。2002年ワールドカップ日本組織委員会(JAWOC)の決定は、大きなニュースになるはずだった。しかし先週アメリカの西海岸で起こった事件が、3年後のワールドカップ日韓共同開催そのものに大きな影を投げかけている。
 7月9日にロサンゼルスで開催された国際サッカー連盟(FIFA)臨時総会で、アジアサッカー連盟(AFC)のメンバーが全員退席した。2002年ワールドカップの出場枠割り当てへの不満から「ワールドカップをボイコットする」ことをアピールするための行動だった。
 32カ国が出場して行われる2002年大会。FIFAは昨年12月4日にアジアに「4」の枠を与える決定をした。
 同じ32カ国で行われた98年大会では、「3.5」だった。アジアの第4代表イランは、オセアニア代表とプレーオフを戦わなければならなかった。したがって今回はアジアに「0.5」枠を増したことになる。

 しかしそれはFIFAからの見方だ。この「4」は開催国の日本と韓国を含んでのもの。アジアの側から見れば、予選を通じて出場できるのはわずか「2」ということになる。
 AFCには45カ国の協会が加盟している。日本と韓国を除く43カ国がわずか「2」の座を争うというのは、両国が98年大会出場の実績をもつ実力国であることを考えても過酷だ。そこでAFCは枠をひとつ増やし、「3」にすることを要求した。それが通らなければ大会ボイコットも辞さないという強硬な姿勢を、昨年12月15日の理事会で決議したのだ。
 AFCの要求に対しFIFAは具体的な対応策をもっていなかったが、今月にはいってヨーロッパサッカー連盟(UEFA)が15の枠から「0.5」をAFCに譲ることを決め、騒ぎは収まると予想された。前回優勝のフランスを除くヨーロッパ予選で14位になったチームに、アジア予選3位チームとプレーオフを行わせるという提案だ。

 しかしAFCは「UEFAの姿勢には感謝するが、要求が満たされたわけではない」と、この提案を拒否し、臨時総会での「総退席」となった。退席には日本と韓国も加わった。両国ともAFCのメンバーだからだ。
 世界では、この総退席とともに、「FIFAはアジアから開催権を取り上げ、他国に代替開催させる」との報道も流れた。すぐに準備が整うところとしてイングランドとアメリカの名まで上がった。しかし現在のところ、FIFAには開催国変更の考えはないようだ。
 AFCは、10月に臨時総会を召集し、ワールドカップをボイコットするかどうかを最終的に決めるという。しかし2002年大会へのエントリー書類提出期限は9月末の予定だ。最悪の場合でも、12月7日に東京で開催される「予選組分け抽選会」がデッドラインとなる。

 最終的にアジアがボイコットした場合、日本と韓国だけが参加して大会を開催することは可能だろうか。私は否定的だ。なぜならば、両国とも「アジアで初めてのワールドカップ」をスローガンに招致運動を展開してきたからだ。この大会は、日本と韓国だけでなく、全アジアの大会でもある。強行すれば、アジア・サッカーのなかで両国の将来はない。
 アジアなくして、「2002年ワールドカップ日本・韓国大会」はありえないのだ。
 10月のAFC臨時総会を手をこまねいて待っているようではいけない。いまこそ、日本と韓国が最大の協力関係を発揮し、対アジアに、そして対世界に強力な「外交」を展開して解決の道を開かなければならない。この問題を解決しない限り、2002年大会の成功はない。

(1999年7月14日)
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