サッカーの話をしよう

No.133 FIFA行動規範

 「新時代」を予感させる名古屋グランパスの天皇杯優勝。個性的で才能豊かな選手が目白押しで、しかもハイレベルなチーム同士の対戦で毎日ワクワクさせられた高校選手権。96年正月、日本のサッカーは最高のスタートを切ることができた。
 ことし、日本のサッカーは非常に重要な「歴史の節目」を迎える。日本サッカー協会の創立75周年、そして1936年の「ベルリンの奇跡」(オリンピックで優勝候補のスウェーデンを3−2で破る)から60年。この記念すべき年に28年ぶりのオリンピック出場はなるだろうか。そして6月1日、国際サッカー連盟(FIFA)特別理事会の票決は「2002年ワールドカップ日本開催」をもたらすだろうか。

 Jリーグ、天皇杯という日本のメイン二大会も、ことし大きくフォーマットを変える。「1シリーズ制」になったJリーグは、内容を向上させてまたファンを引きつけることができるだろうか。「決勝大会」出場がこれまでの2.5倍にあたる80チームとなる天皇杯は、各地のサッカーを活性化するだろうか。
 中央や各地のサッカー協会だけでなく、日本全国でサッカーに関係するすべての人が結束し、力を合わせて96年を「新しいサッカー元年」にするよう努力しなければならない。

 FIFAの機関誌である「FIFAニューズ」の最新号で、ジョアン・アベランジェ会長は「サッカーの行動規範」を提示した。
 買収などの不正行為、人種差別、暴力、有害薬物など、現代社会がかかえる諸問題がサッカーにも大きな影を落とし、私たちの愛するサッカーに危機を与えつつある。こうした時代に、サッカーに関わるすべての人が共通の「行動規範」をもち、力を合わせて新しい世紀を迎えようというのがその狙いだという。

 日本でも、Jリーグの発足によってたくさんの人がサッカーに関わるようになったことで、いろいろな面で「混乱」が見られる。同じ「日本のサッカーのために」というテーマで話しても、考えることが180度違うことも少なくない。
 そこに明確な行動規範があれば、混乱は最小限にくい止められるだろう。そして、より実のある議論を通じて、サッカーをよりよくしていくことができるに違いない。それはすなわち、サッカーを愛し、サッカーに取り組む私たち自身の人生を、より豊かなものにするはずだ。
 世界に広がる「サッカー・ファミリー」の一員として、私たちもこの「行動規範」を心に刻んでサッカーに取り組んでいかねばならないと思う。

サッカーの行動規範(FIFA)
 サッカーのためにいつもしなければならないこと。
1 勝利のためにプレーする。
2 フェアにプレーする。
3 ルールを遵守する。
4 相手選手、チームメート、レフェリー、役員、そして観客を大事にする。
5 尊厳をもって敗戦を受け入れる。
6 サッカーへの関心を促進する。
7 不正行為、有害薬物、人種差別、暴力、その他サッカーに危害を及ぼすものをすべて拒絶する。
8 不正行為の誘惑に抵抗しようとしている人びとの助けになる。
9 サッカーの信用を傷つけようとする人びとを弾劾する。
10 サッカーの名声を守る人びとの功績を認める。


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(1996年1月16日)
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

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1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。

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