サッカーの話をしよう

No.27 体質改善は週1リーグで

 サッカーの歴史でもまれに見る「悲劇」の主人公となってしまった日本。「取り込み逃がした」魚は、次に出会えるのは4年後という大物だった。
 しかしこの大物に次に出会ったときにしっかりと釣り上げるために、日本のサッカーは新たな歩みを始めなければならない。そのひとつが、国内サッカーの見直しにあると私は思う。

 日本サッカー協会の強化部門では、年間の試合を増やすことが強化に不可欠であることをかねてから強調してきた。そしてJリーグの日程もそうした考えに沿ったものになった。93年の第1ステージは毎週2試合、第2ステージは2週おきに週2試合がはいった。
 激しくしのぎを削る試合は、もちろん、選手を成長させる最大の要因だ。かつての日本リーグのようにリーグ戦が22試合、天皇杯やその他のカップ戦を含めても30試合をオーバーする程度で、しかもオフの期間が長くては、国際舞台で通用するタフさを単独チームで育てることは無理だった。それが、90年のコニカカップの創設などの理由だった。

 しかし、年間の試合数を増やすために毎週2回の試合を行うことには、私は賛成できない。選手の疲労による試合のレベル低下、負傷者が続出するという理由からではない。サッカー選手を成長させる「本来のリズム」に反すると思うからだ。
 サッカーの選手を成長させる最良のリズムは、毎週1試合のリーグ戦であり、それを約10カ月間にわたって継続することだ。
 週1試合の日程は、きちんとした休息、回復と、フィジカルフィットネスを向上させるトレーニング、技術練習、戦術練習を可能にする。週末に激しいリーグ戦を戦い、ウイークデーには体力をアップするトレーニングを行い、技術的な欠点を克服し、次の対戦相手を想定した戦術的な練習を実行する。こうして1年間を過ごせば、選手は実戦を経験しながら体力面、技術面、戦術面でシーズン前とは比較しようのないレベルに達しているはずだ。
 毎週でなければ、水曜日にカップ戦など他の試合がはいるのはタフな選手をつくるという意味でいいかもしれない。しかし、リーグ戦の基本はあくまで「週1試合」だと思う。
 10カ月間、約43週のなかで、代表チームの日程やカップ戦の決勝などで数週間消えるから、18チーム(年34試合)あるいは16チーム(30試合)のリーグ戦が適当だろう。 こうしたことを実行するには、リーグ戦だけでなく天皇杯などカップ戦のの日程整備も必要だ。

 「週1試合」のリーグ戦をベースとした日程は、トップクラスにだけ必要なのではない。少年から中・高校生、大学生まで、年間のうち少なくとも9カ月間は週1試合のリーグ戦をベースにすべきだ。年齢に応じて、移動できる範囲があるから、少年では市内のリーグ、中学では近隣の市町村を含めたリーグ、そして高校では県内のリーグなど、無理のない範囲で行うことができるだろう。
 年3回程度の勝ち抜きトーナメントが中心となり、公式戦数の差が極端に大きな現在の日程は、早急に再考すべきだ。強いチームも弱いチームも同じ試合数となるリーグ戦は、選手の集中を防ぎ、いろいろなチームに個性的な選手が生まれる可能性を生む。
 勝ち抜きトーナメント中心の現在の日本サッカー。リーグ戦中心の日程への変化は「体質の抜本的改善」とでもいうべき大事業だ。しかし日本のサッカーがステップアップするには、この道を歩むほかはない。

(1993年11月2日=火)
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

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1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。

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