サッカーのムダ話

Talk6 ひとひとりの人生をも変える祭典、ワールドカップ

皆さんこんにちは。前回、オイルショックによって内定取り消しの危機に陥った一部始終を語ってもらいましたが、今回はサッカースクールの経験がその後の人生にどう影響したか、そして、「サッカーマガジン」志望の理由について語ってもらいました。
 
サッカースクールで培った編集業務
 
兼正(以下K)
その時々で紆余曲折はあっても、ここまでは順調にキャリアを積み重ねていっている印象を受けるんですが......。

良之(以下Y)
人には中学1年生で編集部に入り、中学3年生でサッカー部に入部、大学卒業と同時に「サッカーマガジン」編集部に入社――なんて計画的な人生なんだろうって言っているけど、実際はそんなこと全くないんだよね。

K
それはどうしてですか?

Y
サッカースクールのアルバイトをしていたときに、「会員に配布する広報新聞を作りたい」って言い出した社員の人がいて、やってくれないかって頼まれたんだ。それからひと月に1冊、会員に配る会報誌を作り始めたんだよ。

K
お願いされた時、少し時間をもらって考えてみようとは思わなかったんですか?

Y
いや、それがすごく簡単に引き受けちゃった。中学のときに会報誌を作っていた経験があったから大丈夫だろうって。でも甘かったね。文章ひとつとっても、中学のときに作っていた会報誌は「原稿用紙3~4枚くらいで記事書こうか」って具合だったから、文字量、さらに行数まで指定されるものなんて経験がなかったんだよ。だからもう大変。会員5~600人に配るから、それなりにしっかりとしたものを求められたからさ。実際作っていた会報誌の一面には「今年の秋期大会では~」なんてサッカースクールに関する情報をもってきて、裏面には「ペレがこんなこと言いました」的な話を写真と一緒に掲載してた。写真はサッカー雑誌の切り抜きを使ったりして。今なら著作権法違反だよね(笑)。

K
おじさん一人で作っていたんですか?

Y
そう、ひとりで作っていた。最初のうちはすごく大変だったよ。よく徹夜もしていたし。大学3年の秋くらいからはじめたから、「サッカーマガジン」のアルバイトをしながら作っていたね。凝った作りにしていたから人に原稿を発注していたよ。

K
赤字を入れたりはしていたんですか?

Y
やってたよ。他人が書く文章ってこんなに癖があるものなのかって、嫌というほどわかった(笑)。でもその経験が後の人生で一番役に立っていると思うよ。
 

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「サッカーマガジン」志望の理由
 
K
「サッカーマガジン」を志望したのはなぜですか?

Y
ワールドカップに行くチャンスが一番ありそうだったからだよ。66年のイングランド大会を見て、次が70年のメキシコ大会。テレビ報道はなかったから、試合の結果が知りたくて、夕刊の英字新聞を一ヶ月間購読して、そこで「ブラジルが勝った!」とか一喜一憂してた。そうしたら、たまたま「三菱ダイヤモンド・サッカー」がその大会のビデオを入手し、放送し始めて僕もそれを見たんだ。映像がカラーだったっていうこともあると思うけど、それぞれの国が違ったスタイルで試合に挑み、白熱した試合を繰り広げるわけ。とにかく凄かった。それでなんとかワールドカップに行けないかなって思い始めた。行けそうなのはどこかなって考えたら「サッカーマガジン」かサッカー協会のどちらかだったんだよ。

K
当時、サッカー専門誌は「サッカーマガジン」ひとつだけだったんですか?

Y
小さいのはいくつかあったと思う。「イレブン」ていう選択肢もあったけど、間違えだらけだったからちょっとなって思って辞めたような気がする(笑)。それもあって「サッカーマガジン」にしたんだよ。大学卒業してすぐのワールドカップは74年西ドイツ大会。自分の中では大学卒業してすぐの新人に行くチャンスはないだろうって思って、その次の78年のアルゼンチン大会に賭けてた。行ければ会社辞めてもいいと思っていたくらいにね(笑)。

K
ワールドカップはおじさんの人生を変えたんですね。

Y
でも父親と母親の前で話をしたときは大変だったよ。まさかワールドカップへ行きたいから「サッカーマガジン」に就職したいなんて言えないから、サッカースクールで指導したことを引き合いにして、サッカーは子供たちが成長するのにすごくいいスポーツで、子供の教育が伴ったこんなすばらしい競技を広めることは、ひいては日本の社会をよくすることに繋がるんだっていったんだ。だから、ただ好きだからその道に進もうと考えているわけじゃないってことを切々と語ったよ(笑)。

K
理解は得られたんですか?

Y
父親が背中を押してくれたんだ。「がんばりなさい」って。えらいよね、お父さんは。こんな邪まな考えが根底にあったのに(笑)。
 
 
→(次回に続く)

サッカーのムダ話について 大住良之の甥、大住兼正(サッカーライター見習い中)と繰り広げるエンドレス・サッカートーク!取材の裏話や記事にならなかったコボレ話など、ここでしか読めない貴重な内容満載の対話連載です。

企画、構成 : 大住兼正

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