No.854 警告累積による出場停止は同試合数で

 「警告の累積による出場停止」という言葉を、いちどは聞いたことがあるだろう。
 1試合で2回警告(イエローカード)を受けるとその場で退場だが、1試合では1回でもそれが積み重なると処分の対象になる。
 日本サッカー協会は出場停止になる累積数を競技会の試合数に応じて定めている。1チーム9試合以下の競技会では2回で1試合の出場停止。10試合以上19試合以下では3回、20試合以上の競技会では4回で1試合の出場停止となる。
 問題はJリーグのナビスコ杯である。
 この大会は、本来2グループによる「予選リーグ」を行い、両組の上位2チームにAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場の4チームを加え、計8チームで準々決勝以降の「決勝トーナメント」を行うはずだった。しかし大震災の影響で日程変更を余儀なくされ、14チームで2戦制の1、2回戦を行い、勝ち残った4チームとACL参加4チームで1戦制の準々決勝以降を戦うことになった。
 当初、予選リーグの警告累積は決勝トーナメントには持ち越さないことになっていた。「勝ち上がり組」が6試合を消化しているのに対し「ACL組」は準々決勝が初戦。公平を期すためだった。
 ところが1回戦からのノックアウト方式に変更された時点で、この措置が外された。
 第一に、警告を受けること自体が「悪」であること、そして第二に「予選」「決勝」という二段階の大会ではなく「ひとつの大会」になったことが、その理由だったという。
 だがそもそも警告の累積数が問題になるのは、試合数が同じという前提に立ってのものではないか。
 ことしのナビスコ杯では6人が警告累積で1試合出場停止になった。うち4人は相手と同じ試合数だった。だが浦和のマルシオリシャルデスと山田直輝のケースは違った。
 1回戦からの4試合で警告が2回になったマルシオはC大阪(これが大会初戦)との準々決勝が出場停止だった。その準々決勝で2回戦に次ぎ2回目の警告を受けた山田直は、G大阪(大会2試合目)との準決勝に出場できなかった。
 サッカーの根本精神のひとつ「公平」の観点から、Jリーグの結論は間違っていると、私は思う。同時に、日本サッカー協会は試合数が極端に違う場合の累積警告の取り扱いについて明確なガイドラインを示すべきだ。
 浦和と鹿島の決勝戦では、警告累積による出場停止はいない。それは単なる幸運だ。
 
(2011年10月12日)

No.853 ワールドカップ予選に挑むペルー

 世界の6地域連盟のうち最も壮大で最もハードなワールドカップ予選が始まる。今週金曜日、10月7日にスタートする南米予選だ。
 南米サッカー連盟加盟国はわずか10。以前はグループ分けして開催していたワールドカップ予選を、94年フランス大会以来、全チームのホームアンドアウェー総当たりで行うようになった。
 今回は開催国ブラジルが参加しないため9チームによる予選大会だが、それでも再来年の10月まで実に25カ月間にわたり、全18節、72試合が行われる。
 ブラジルは出ない。しかしそれ以外の南米に割り当てられた出場枠は前回までと同じ4・5。今回の予選で5位になったチームがアジアとのプレーオフを勝ち抜けば、ブラジルを含めて6カ国に出場権が与えられる。
 なかでも期待が高まっているのが、前回予選ではわずか3勝、最下位に終わったペルーだ。ことし7月に行われたコパアメリカ(南米選手権)で3位という好成績を残した。
 率いるのは9人のライバル監督中最年長、66歳のセルヒオ・マルカリン。かつてのスター選手が多いなかで、プロ選手の経験皆無という変わり種だ。
 ウルグアイ国籍だが育ったのはアルゼンチン。ユース年代までDFとしてプレーしたが、大学卒業後石油会社に就職して29歳までエリートビジネスマンとして活躍した。しかし74年ワールドカップで祖国ウルグアイがオランダに完膚無きまでに叩かれるのをテレビで見てサッカーのコーチになることを決意、あっさりと退職した。
 最初は「ベンツを売り払ってバス通勤」という日々だったが、やがて力を認められ、パラグアイやペルーでクラブの監督として成功する。そして99年にはパラグアイ代表監督に就任、02年ワールドカップの予選突破を果たす。しかし本大会を前に解任される。
 ことし6月のキリンカップで来日。しかし目前のコパアメリカは眼中になく、「ワールドカップ出場だけが目標」と語った。
 ドイツのハンブルガーSVに所属し、コパアメリカでは5得点を挙げて得点王となったFWパオロ・ゲレーロを中心に、強力な攻撃陣をもつペルー。
 「マルカリン監督がチームに規律をもたらし、ペルーはメンタル面で大きく成長した」と主将のゲレーロ。
 82年スペイン大会以来、実に32年ぶりのワールドカップ出場に向け、今週金曜、ペルーは首都リマに強豪パラグアイを迎えて予選の口火を切る。
 
(2011年10月5日)